俺はスマホの連絡帳を開き、その家事手伝いの名前を探す。千人近くある連絡先の中から何とかその連絡先を見つけ、迷うことなくすぐに電話をかけた。

「もしもし。紫水様、お久しぶりです」

どこか機械のような声が出る。俺以外が最初この声を聞いたら、とても機嫌が悪いのかと思ってしまうだろう。二ヶ月半ぶりでも変わらないその声に、俺はフッと笑ってしまった。

「実は、海外ロケに行くことになったからまたしばらく家事をお願いしたいんだ」

「承知致しました。ルル様とリリ様のお世話もさせていただきます」

「ルルとリリもお願いしたいんだけど、実はーーー」

俺は躊躇うことなく若菜のことを話す。誘拐だの監禁だの犯罪の話をしているというのに、電話の相手は全く驚いていない。息を呑む音さえ聞こえてこない。

「……承知致しました。では、若菜様のお世話兼監視も担当させていただきます」

相手が承諾したことは、犯罪の手伝いをしているということだ。俺は「いいのか?」と訊ねる。引き返すのなら今のうちだ。一度若菜の世話をすれば、もう相手も犯罪者になってしまう。