「ごめん、ちょっと電話に出てくるね」

若菜にそう笑いかけ、スマホを手に寝室へと向かう。俺の今の顔は自分でもわかる。めちゃくちゃ不機嫌な顔だろう。せっかく若菜と過ごしていた休日を邪魔されることになったんだから。

「はい、もしもし?」

少し怒った口調で電話に出たものの、マネージャーは「圭、またバラエティーへの出演が決まったぞ!」と嬉しそうな声を上げていた。

「バラエティーって何の番組に出ることになったんですか?」

俺が訊ねると興奮気味に「世界を歩こうという番組だ!」と返される。よりによってその番組か……。俺は電話を切った後、どうしようかと考えた。

世界を歩こうという番組では、海外の楽しさを伝えるということで海外ロケに行かなければならない。そうなれば若菜のお世話ができなくなってしまう。でも、鎖を全部外してしまったら逃げてしまうかもしれないし……。

少し考えた後、俺はあることを思い出した。若菜を監禁しているため、今は家事や掃除は俺が全部こなしているが、元々俺は家事手伝いを雇っていた。彼女は俺に徹底服従しているから、若菜のことを警察に言ったりしないだろう。