「若菜って綺麗な髪だよね。おまけにいい髪質だし……。染めたことないの?」

若菜の絹のような髪を触りながら訊ねる。俺は仕事柄、演じるキャラに合わせて髪型を色々と変えるし、髪の色も明るいものから暗めのものまで色んな色に染めてきた。今も俺の髪は華やかなゴールドだ。黒髪でいたのは中学生までだったような気がする。

「そ、そうだね、染めたことはないかな。染めると髪が痛みやすくなるって聞いたから、一度も染めたことがないんだ。パーマは高校を卒業してすぐにかけたんだけど……」

「えっ!?パーマかけてたの!?」

俺の知らない若菜の情報だ。でも、若菜は髪を緩く巻いてもきっと可愛い。今からヘアアレンジしてみようかな。

「ふわふわ髪の若菜もきっと可愛いね。今からちょっとアイロンかけさせてよ。そのシフォンワンピースに合うと思うし」

「わ、わかった」

若菜の手を引き、椅子に座らせる。そしてウキウキしながらアイロンを取り出した刹那、テーブルに置かれていたスマホに電話がかかってくる。マネージャーからだ。