俺がそう言うと、若菜の表情が一瞬だけ曇る。どうしてそんな顔をするの?俺たちは付き合っていて、結婚だってする予定なのに……。

「で、でも……」

若菜は曇った顔のまま何かを言おうとする。その先の言葉を聞くのが怖くて、俺は若菜の唇を自分の唇を重ねて言葉を奪った。

「んっ!んん〜!」

胸板を押す若菜の手を掴み、ソファに押し付ける。何度も唇を重ねて、若菜の呼吸をただ乱していった。

「いいでしょ?名前で呼んで、敬語もやめてくれるまでずっと離さないよ?」

「そ、そんな……」

俺が意地悪な提案をすれば、若菜は恥ずかしそうに俯く。若菜は迷っているのか黙り込んでしまい、チクタクと秒針の音が長く響いた。

「…………圭、くん……」

消えてしまいそうな声だったけど、確かに俺の耳に届いた。好きな人からさん付け以外で呼ばれる名前は特別で、胸が高鳴っていく。

「嬉しい……。もっと呼んで?」

幸せでとろけてしまいそうだ。若菜の頬に手を添え、また名前を呼んでもらうのを待つ。さん付けより、やっぱりこっちの方がいい。