「ねえ若菜、そろそろここに来て二ヶ月半だよ。そろそろ俺に敬語使うのやめてほしいな。あと、名前もさん付けはやめてほしい」

俺がそう若菜の耳元で言うと、若菜は「えっ!?」と声を上げる。その耳元は真っ赤に染まっていて、恥ずかしがっているのだとわかった。若菜は本当に恥ずかしがり屋だなぁ……。そういうところが可愛いんだけど。

体を離し、若菜の顔を見る。予想通りりんごのように顔が真っ赤だ。おまけに少し震えていて、押し倒したくなるのを堪える。

「……ダメ?」

恋愛ドラマで鍛えた上目遣いをしてみる。若菜は「えっと、その……」と顔を赤くしたまま目を泳がせる。困っているんだ、可愛いなぁ。

「その……圭さんの方が歳上ですし……」

小声で、そして俯きがちに若菜は言う。俺は若菜の顎を持ち上げ、「そんなの気にしなくていいよ」と微笑んだ。

「ここには俺と若菜の二人きりだよ。それに、俺たち付き合っているのにどうして敬語で話す必要があるの?」