「若菜、どうしたの?」

ジッと意地悪な顔で見つめられ、私は「何でもないです」と慌てて顔を逸らす。何だろう、この変な感覚。圭さんに対する感情が何なのかわからなくなる時がある。圭さんは誘拐犯なのに……。

溺れないように頑張っているけど、このままじゃいつか堕ちてしまう。そうなれば圭さんの思う壺だ。そんなことあってはならない。早く逃げださないと……!

「そうだ。若菜、地下から一歩も出たことがなかったよね?」

もう一度私の手に手錠をつけた後、圭さんは服のポケットから鍵束を取り出す。おしゃれでどこかヨーロピアンな雰囲気を出す鍵束には、いくつも鍵がぶら下がっていた。

「そういえば、そうですね。ずっとこの部屋にいました」

私は少しの期待を覚えつつ、口を開く。圭さんは私に近づき、首輪と足枷を外してくれた。そして私が逃げないように腕をしっかりと持ち、ニコリと笑う。

「いい子にしているご褒美に、今日の夕食はリビングで一緒に食べよう」

脱出をするためのチャンスが見え始めた。