「何?どうしたの、若菜」

とろけるような顔で微笑まれ、私の胸がドキッと高鳴る。こんな表情、恋愛ドラマの主人公役を演じていた時にも見せなかったものだ。

「あの、私、今日も仕事があるんです。早く出勤しないといけませんし……」

少しの希望を抱きつつ、外に出してほしいと遠回しに頼んでみる。仕事を何日も無断欠勤することになれば、さすがに誰かがおかしいと思うだろう。

しかし、そんな期待も虚しく、圭さんの口から出た言葉はあまりにも残酷だった。

「ああ、仕事なら心配ないよ。退職願をペットショップにちゃんと出したから。あと、今日からここが若菜の家になるからマンションも解約したよ。若菜の心配するようなことは何もないからね」

私が眠っている間に、勝手に色々なことをされていたんだ……。ガラガラと足元が崩れ落ちていくような感覚がした。

職場の同僚や先輩、マンションに住んでいる人たちが通報してくれなかったら、誰が私を助けてくれるんだろう?圭さんに抱き締められながら考えても、思いつかなかった。