私は、目の前の出来事が夢のようで驚きから体の震えが収まってしまった。

圭さんが誘拐犯で、藤田さんとしてペットショップに来てくれていて、私の持ち物をブランド物に交換していたことなど、全部圭さんが目の前で話したから。

こんな形で圭さんとまた会うなんて、と複雑な気持ちになる。いくら好きな俳優さんに好かれていたとはいえ、こんなところに閉じ込められてしまった今、嬉しいとは思えず恐怖と戸惑いだけが胸にあった。

「何考えてるの?」

気が付けば、私の顔の前に圭さんの顔がある。華やかな顔で見つめられ、私は「わっ!」と驚きながら後ろに後ずさろうとする。しかし、圭さんに腕を引かれて抱き締められてしまった。

「……ずっとこうしたかったよ、若菜。やっと君に触れられる」

離さない、と言わんばかりに強く抱き締められる。これが好きな人だったらとても嬉しいことなのだろう、きっと。

「あ、あの!」

私は怖いのを我慢し、声を出す。圭さんのしていることは犯罪。誰かに見つかって世間が騒ぐ前に目を覚まさせないと!