さらに、自分の足に黒くて頑丈そうな足枷、首には首輪、そして両手に手錠を嵌められていることを知って帰宅途中に何者かに襲われた記憶を思い出す。途端に恐怖で体が震え始めた。

一体どうして私が誘拐されたの?私の両親はもうとっくに亡くなっているし、親戚にお金持ちの人なんていない。私を誘拐したって何のメリットもないのに……。

コツコツと遠くから誰かがやってくる足音がする。私の体の震えはさらにひどくなり、瞳には涙があふれた。逃げたくても縛られているから逃げられないし、隠れたくても震えたこの体は全く言うことを聞いてくれない。

そうしているうちに、ガチャガチャと鍵をいじる音が聞こえてくる。そして音を立てて分厚い頑丈そうなドアが開いた。でも、私は怖くて俯いているから、誰が入ってきたのかはわからない。

「起きたんだね、おはよう。そんなに震えなくても大丈夫だよ?」

誘拐犯とは思えない優しい声がした。私は恐る恐るドアの方を見る。そして、驚きで目を見開いた。

「あなたは……」

そこにいたのは、私の大好きな俳優の紫水圭さんだった。