若菜が脱走して早数週間。俺の心は寂しさでおかしくなってしまいそうだった。若菜という癒しがいないため、暗い家に帰るのが辛い。仕事に集中できない。

「紫水様、申し訳ありませんでした。私が帰っていなければ……」

暗い表情の俺に対し、七海が感情を珍しく入れて何度も頭を下げる。それを見ていても虚しいだけだ。

「いいんだ、もう。どうせすぐに連れ戻せるんだから」

俺はそう言い、スマホを取り出してLINEを開ける。最近毎日連絡を取っている幼なじみの秀とのトーク画面を開ければ、今日若菜が何をしていたのか詳細に書かれていた。

「若菜が……また料理を……」

若菜がチャーハンを作ってくれたと書いてあり、俺の中にマグマのような苛立ちが生まれる。若菜の手料理なんて食べたことがない。まあ、俺がずっと拘束していたというのもあるけど……。

家に帰って若菜がご飯を作って待っていてくれたら、どんなに幸せなことだろう。そんな幸せを俺じゃなくて秀が味わっているなんて……!