テレビのニュースで圭さんが逮捕されたという内容が流れることはなく、私はずっと黒岩さんの家の中にこもって今日も家事をして黒岩さんの帰りを待っていた。

「ごめんなさい、なかなか捜査が進展しなくて……」

申し訳なさそうに言う黒岩さんに、私は「気にしないでください」と笑いかける。鎖がなく、無理やり押し付けられる愛がない生活は思っているより自由だ。

「あっ、この肉じゃがおいしい!」

私の前に座り、私の作った夕食を食べて黒岩さんが笑ってくれる。料理上手な人に褒められるって嬉しいから、私も「ありがとうございます」と笑顔を向ける。

何だか新婚さんになった気分だ。結婚したらこういう風に温かくて、優しくて、些細なことで幸せを感じたり笑ったりするのかな……。

黒岩さんが笑顔の裏で考えていたことなど知らず、私は笑っていた。そして私は再び絶望に突き落とされることになる。でも、それを知るのはもう少し先のお話。