「…」



耳に入ったその声に、痛みが吹き飛ぶ


どくんどくんと、早まる心音


ゆっくりと顔を上げれば


そこには
驚いたように私を見つめるひとがいた


目を疑うように、じっと私を見つめて

でも、すぐに、はっと我に返り
失言だったと言わんばかりに
口元を手で覆う



「……この先には何もないぞ」



取り繕うようにそう言って



「さっさと帰れ」



と、突き放す



だけど、私が怪我をしているのに気付くと
そっとその手を差し出した



「……送ってやる」



…………変わらない


無愛想でそっけない


だけど、隠しきれない優しさ



喉が痛い


目頭が熱い




私は勢い良く、その胸に飛び付いた





「………ロウっ!!!」





「ロウ、ロウ…っ」




何度も名前を呼びながら
その存在を確かめるように
力強く抱き締める




「………お前……」