「終わったか」


しばらくして
庵から出てきた私

外で待っていてくれた様子のロウ


すっかり元通りになった私は
上機嫌にロウに抱きついた


「終わった」

「邪気封じの組紐か」


手首の組紐に気付いたロウが呟く


「まったく…
塞ノ神のやつ、そんなものを持っているならさっさと渡せばいいものを…」


ぶつぶつ呟きながら
ロウは尻尾を使って私を自分の背中に移動させる


「ロウ、どこ行くの?」

「湖の雛。見たいんだろ」

「!生まれたの!?」

「ああ」

「見たい!」



『もう少しで生まれるよ』

『とってもかわいいよ』


森のみんなに教えて貰って
いつ生まれるかいつ生まれるかって
楽しみにしていた湖の雪月花(せつげっか)の鳥の雛


「行くぞ」

「行く!」


きらきら表情を輝かせる私にロウはふっと笑って歩きだした


最初の頃は拒否していたロウも
今ではここに来ることを許してくれるようになった

こんな風にそばにいることを許してくれて

色んな所に連れていって
色んなものを見せてくれるようになった



「…」



…きっかけってなんだったっけ



…。



……ああ、そうだ




きっかけは―…