再出発





「俺の推しメンは、」

杉野くんが微笑んだ。

「兼井真白」


目の前が真っ暗になる。


え?

たった一週間で辞めた私?

アイドルとしての姿は、合格発表直後に撮られた一枚の写真だけなのに?

後列に小さく写ってただけなのに?




「兼井真白ってマジで可愛くて、理想の女の子って感じなんだ」

「へ、へぇー」

「ほんとに。あー彼女にしてぇー」



脈打つ音が聞こえる。

何がなんだかわからない。
頭が回らない。


「ごめん。いきなりこんな話してひくよな」

「いや、大丈夫」




本当は全然大丈夫じゃない。

杉野くんにばれるのも時間の問題かもしれない。


そしたら学校を辞めないといけなくなる。

それだけは、なんとしても避けたかった。