わたしたちの好きなひと

「そうね。稲垣さんはサッカー部のことは知らないでしょうけど、岡本さんは献身的でクレバーな良いマネージャーなの。巻きこみたくなかった……、そうよね」
「…………」
 返事ができない。
 ごめんね、鈴木さん。
「ね。お弁当食べたら、かわらけ投げよう。厄除けだってさ」
 紅葉のなか、立ち止まって深呼吸。
 恭太と岡本……。
 考えたってどうしようもないことは、考えないほうがいい。
「そういえば稲垣さん、旅行委員よね? お弁当を食べてからでも西明寺(さいみょうじ)に行って、お座敷で、お抹茶をいただけるかしら」
「おまっちゃ?」
「ええ。お茶菓子もつくんですって」
 なるほど。
 それで女子は、みんなアッチに行っちゃったんだ。
「いやよ!」岡本が突然、階段を駆け上がってきて、驚くわたしたちの前にケータイを突き出した。
「わたしは高山寺(こうざんじ)に行って、絶対、鳥獣戯画を見るわよ。…ほら、並びな。写真撮ってあげるわ」
「…………」「…………」「…………」
 わたしも鈴木さんたちも、岡本の機嫌に振り回されているのは同様。
 こっそり目配せしていると岡本が盛大にため息をついた。