まさか5人もなんて。
「勘弁してよ。んもう」
 女子の席をまわったら、お菓子の空き箱でゴミ袋が倍にふくれるし。
 こんな仕事を、わたしひとりに押しつけて。
 お礼がアメちゃん1個とかだったら、ぶんなぐるわよ、掛居。


 軽やかに京都到着を知らせる音楽が鳴って。
「う…うーん。到着ですか」
 ウォーリーがノビをしたときには、わたしは自分のバッグとクラスの旗をかかえて、ウォーリーの座席の脇にひかえていた。
 もちろん、大きなゴミ袋といっしょに。
「おや、稲垣さん。点呼はどうしました、点呼は。…もう京都ですよ」
「終わりましたっ」
「ゴミなんか放って行かないでくださいよ。伝統ある我が校の恥です」
「集めましたっ」
 このゴミ袋が目に入らないの?
 ウォーリーは、じ一っとわたしの顔を見て。
 満杯のゴミ袋を見て。
 突然立ち上がり、車内を見回した。
「掛居くんはどうしたんです、掛居くんは。女子にばっかり頼ってだらしのない」
 自分だって、だらしなく、ず一っと! 寝てただろうがぁ。
「掛居くんは洗面所の清掃に行ってますっ」
「リアリー?」
 そういうのは教室だけにしてくれってばぁ。
 一瞬ほうけたウォーリーは、自分のしたくがまだだったことに、やっと気がついたらしい。
 突然あたふたと荷物をまとめだした。
 車内はもうアナウンスも終わって、電光掲示板にはKYOTO…KYOTO…。
 わたしはウォーリーの前にへばりつくように仁王立ちして。
 (12分…12分…)
 お経みたいにぶつぶつ唱えながら、ウォーリーの目をそらす方法をシミュレーション。