わたしたちの乗ったのぞみ号が京都に着くのは10時39分。
 それは委員会で作った日程表にきちんと書いてある。
 メモにはそのあと10時44分、10時51分とあって、51分に赤丸がついている。
「…12分ね」
 12分間、先生たちの目を反らせばいいんでしょっ。
「ちゃんと乗ってきなさいよ、ばかどもがっ!」


 むしろ冷静になってしまったわたしが、4号車の車両ドアを開けると、左右の列ともに、しーんとしずまっていた。
 押し殺した興奮。
 みんな知ってるのね。
 ぎろぎろ順番ににらみつけて、男子たちの首を亀の子みたいにすくませる。
 眠っているウォーリーの横を、息をころして通りぬけようとしたとき。
「あ、稲垣ぃ、(こん)くん知らない? どこにもいないのよぉ」
 岡本の無邪気な声に、みんな一斉にギクギク。
 わたしを見上げてくる視線がいまいましいったら。
 ありがたいことに、ウォーリーだけはまだ居眠り中だ。
「ほかの車両のサッカー部の子のとことか…行ってみた?」
「ひっひっひ」「うくく」
 とたんにあがった下卑た笑いに、こちらもにっこり笑い返して。
 蹴り! 蹴り! 蹴り! 蹴り!
「…いて」「あたっ」「げっ」「うわっ」
 通路に順に押し殺した男子の悲鳴をあげさせながら頭は高速回転。
 いくら怒って見せたって、これでわたしも共犯だ。
 京都までは34分。
 (どうしよう)
 考えろ。考えろ。