「あのね、稲垣さん。これ、名古屋を出たら稲垣さんに渡してくれって、さっき掛居くんと(こん)くんに預かったんだけど」
「掛居…に?」
 ついキツイ言いようになってしまったことを反省するまえに、鈴木さんがビクッとあとじさる。
「あの…、わたしも…なんでわたしなんだろうと思ったし……、なんで名古屋を出たら? …って考えたんだけど……。見ちゃったわ、いまの。どうしよう」
「…………」
 (くう、そぉぉおぉ)
 掛居のやつ!
 鈴木さんなら絶対、約束を守ると思ったんでしょ。
 ひとを見る目だけは、あるったら!
「ありがとっ。鈴木さんは心配しないで」
 引ったくるみたいに受け取って。
 トイレに入って、がさがさ開けたキオスクの袋のなかは雑誌?
 手に取ると、はらりと落ちた紙。
「な…に?」
 数字の列の最後にはひと言【よろしく】。
「かぁ、けぇ、いぃぃぃぃぃぃ!」
 とにかく。
 言いたいことは、わかったわよ。