白い背中がどんどん、どんどん遠ざかる。
「あいつ、見たんだろ、シューコの志願書」
 あっ。
 そう、か……。
「ランクなんか気にすることないのに……」
 つぶやいたのを掛居に聞かれた。
「おまえねぇ……。そうやって恭太をばかにするの、やめなさいよ。おれから見たら――…」
「ごめん……」
 わたしたちは別れていく。
 それぞれが、それぞれ一所懸命に目指す先に。
 わたしは恭太と、掛居と、もっともっといっしょにいたいけど。
 この先は、だれかについていける場所じゃない。
 自分で選ぶ場所だから。
 わたし、応援してるよ恭太。
 恭太の一直線な大好き、すてきだと思う。
 尊敬もしてるんだ。

 掛居はもうすっかり夜の色になってしまった空を見上げている。
「はじまるんだな」
「うん……」
 お別れのためのスタート。
 さよならの始まり。
 恭太が一番先にダッシユするとは思わなかったけど。
 ここから先は、お互い、がんばればがんばるほど離れていく。
「まだ、4カ月、ある」
 うん。
 さみしくなったわたしの代わりに掛居がくれたエール。
 人造人間恭太。
 がんばれ。
 わたしも、がんばるよ。


「ところで――さっき、なににお礼を言われてたの?」
 分かれ道で、ふと質問。
 掛居は笑って首を振った。
「シューコは、受験が終わるまで、なにも考えないほうがいい」
 いつもは、掛居のその、なんでもわかってるみたいなゴッドスマイルがでると、めちゃくちゃ頭にきたくせに。
 そのときわたしは、なぜだか素直に聞くほうがいい気がして、ただうなずいた。

 それが最初の予感…だったかもしれない。