「…じゃ、じゃ…、だめじゃないの! こんなところで遊んでちゃ!」
「夏休みは遊ぶためにあるの」
「…………」

 ひゅ――ぅ

 自動ドアが開いた音が魂が飛んだ音に聞こえてしまった。
「もしか……、ここには本当に、遊びにきてん…の?」
「うん」
「…………」
 ドアは閉まるけど。
 わたしの口は閉まりませんよ、掛居さま。
「ははは。ジョーダン。ま、息抜き?」
「おんなじ…です」
 でも。
 掛居が言うとイヤミに聞こえないのは、掛居が楽しそうだからかな?
「恭太は知ってるの?」
「なにを?」
「ぇと…、掛居が、どこを受けるか、とか……」
「公立は一高を受けることは話した」
「ふうーん……」
 掛居はあっさり言うけど。
 わたしのいまの成績じゃ、一高なんて、全教科5点は底上げしなきゃならない。
 成績上位者として入れる高校で、3年間楽しくすごせばいいと言ってくれる両親とわたしが、考えもしなかった選択肢。
「掛居の場所は…遠いねぇ」
「追いついて、こい」
 別に深い決意もなくポロッと言ったわたしの言葉に。
 答えた掛居の顔は、こわいくらい真剣だった。