こうなったら、わたしもこそこそ話すしかない。
 まわりが騒がしいのをいいことに、岡本に椅子をよせる。
(こん)くんといっしょしたいんだったら、彼に直接聞けばいいじゃない」
「なに言ってるの。聞けるわけないでしょ。彼は準決、進むつもりなんだから」
「あ…」
 そうか。
 マネージャーが、修学旅行の話なんかできないよね。
 勝ち進む気の恭太には、修学旅行なんて他人事(ひとごと)
 いまだって、無駄な時間だと思ってるはず。
(こん)くんはね、めんどうなことはみんな掛居氏まかせなの。だから、掛居氏が書く場所を書く。掛居氏はあんたと行きたい。だからあんたといれば掛居氏、掛居氏がいれば(こん)くん! …わたしって天才」
「…………」
 なるほど。
 そこは認めよう。
 でも…さ。
「悪いけど、その計画、穴があると思う」
「なんで?」
 ふたりそろって背中をのばして息をして。
 まわりのみんなにお愛想笑いをしてから、再び机の上の亀。
「掛居は(こん)くんといっしょかもしれないけど、わたしは行きたいところがあるから、掛居の案にはのらないよ」