「あんた、ばかものたちの話に乗り気になったわね、いま」
 どうしてそう、敵をつくる言いかたするかなぁ。
「ひっどーい、岡もっちゃん」
「そーだよぅ。楽しそうじゃない」
 うん、うん。
 この際、楽しいと思えるならそれでいいよ。
「よーく考えなさいよ」岡本がひとさし指を突き出したのは、わたしに。
「建前として持参していいお小遣いの額は決まってるんだから、食べ歩きなんて企画したら、あんたたち、スポンサーの親におみやげも買えない事態になるわよ? なに食べるつもりか知らないけどね」
 おお。
 なーるほど。
「さすが岡本サマ。いちいち深いわ、読みが」
「岡もっちゃん、すごーい」
 いや、ホント。
 みんなといっしょに感心していたら突然、岡本はわたしの耳たぶをつかんで、口を寄せてきた。
「ねえ、稲垣のとこは、どっちが決めることになってるの? 掛居氏とあんた」
 内緒話にするほどのこともない話だと思うけど?
「決めるって、なにを?」
「どこに行くか、よ。どうせいっしょに動くでしょ? 掛居氏と」
 ああ、なるほど。
 わたしと掛居のことを勘違いしている子が多いのは知っている。
 掛居が気にしないからわたしも気にしないけど。
 班編成にその誤解を持ちこまれると困るかも。