「し…ようがない、じゃない。九州とか台湾なんて、3年間積立するガッ…コの話だよ」
 (ひゃああ)
 わたしったら、声がひっくり返っちゃったよう。
 恥ずかしすぎる。
「おまえ、プリント見たの? 恭」
 やっと掛居が助けてくれた。
「いや、どうせ去年と同じだろ」
「ああ、なるほど。さすが運動部。去年、みやげもらったのか」
「嵐山なんてリトル原宿じゃん。ばからしい」
「なんだ。みやげはニシンそばセットか」
 ニシンソバ?
「ソバならまだましだよな。…チョーチン」
太秦(うずまさ)か」
 会話はわたしの頭上を素通りして。
 わたしには、掛居と恭太の言っていることがさっぱりわからない。
「あ、そういえば、太秦どうよ、シューコ」
「ウズマサ…って?」
 わたしは掛居に聞いたのに。
「ああ。テーマパークとか、…好きそうだな」
 背中から恭太が掛居に返事をして……。
 (ああ……)
 もっと冷たくしてくれればいいのに。
 もっと、ちゃんと無視してくれたら……。
 いたたまれなくて、わたしの頭はますます下がってしまう。
「ミーハーだもんな」
 恭太がぽつんと言った。
 (…え)
 わたし?
 それ、わたしのこと?
「変わんねぇのか、そのへんは……」
 (え? えええ?)
 どうしよう。
 どうしよう、掛居。
 わたし、心臓が耳まで上がってきた。