わたしたちの好きなひと

「はいはい。…じゃ、おれ、シャワーあびて10分でしたくするから。おまえら校門のところで待ってろよ。久しぶりに3人で帰ろうぜ」
 タオルでストレッチをした恭太は、うーんとひとつ伸びをして、階段をおりていく。
 掛居はしばらく恭太の背中を目で追いかけて、わたしに向かってにんまりと笑った。
「あれ? シューコは岡本くんと約束あるんだよなぁ。おーい、恭。シューコはパス!」
 なっ…!
 掛居がワンレンをひらめかせて恭太のあとを追いかける。
「ちょっと、ちょっとぉ!」
 どうしてそうなるのよぉ。
 いま、いじわるしたら許さないって言ったばかりでしょうが。
「待って、待って、わたしも行く」
 掛居が行くなら、わたしも行く。
「こーら。ケンカすんなよ、おまえたち」
 恭太がうんと下から叫ぶ声が、階段の螺旋に反響しながら聞こえてくる。
 わたしは掛居に追いついて。
「やーねぇ。ケンカなんかするわけないじゃないねぇ?」
「なぁ?」
 手すりにのりだして、ふたりで返事。
「だって、わたしたち」「だって、おれたち」
「友だちなんだからぁ」「友だちだもんなあ」
 あはははは。
 変な関係。
「あっ…」
 笑いころげていたわたしの頬に。
 そのとき掛居がキスしたことは。
 恭太には一生秘密だね。

「さーて」「さーて」
 またしても異口同音につぶやいたわたしたちは、肩をぶつけながら走りだす。