わたしたちの好きなひと

 本当は思っていた。
 いま、わたしの目の前に落ちてくる雨。
 北にも南にも。
 (友だちにも恋人にも)
 どちらにも行けず。
 ただ地面にすいこまれる雨は、どこに行くんだろう?
 こんなふうに恭太と歩けるようになったって、わたしはどちらにも行けない。
「おまえ……拓弥(たくみ)が好きか?」
「…………っ!」
 息を飲んでしまった。
 なにを言いだすの?
 そんなこと聞かないで!
「突然…なに、よ」
 いつも突然。
 恭太は言葉までサッカーボール。
 うんと遠くから飛んでくるから、わたしはいつも心臓を直撃されて、よろめくばかりだ。
「…世間のうわさってやつ」
 恭太の黒いスニーカーが、ぴちゃんと雨をはねあげて小石を蹴った。
 信じる…の?
 やっぱり恭太も、そう思ってた?
「掛居に聞けば?」
 うそだとか。
 本当だとか。
 わたしは言えないよ。
 言いたくない。
 唇をかんだって、涙が出そうだから。
拓弥(たくみ)の答えはわかってんだよ。おれが聞いてるのは、おまえの気持ちだろ?」
 わかってるって――。
 掛居の…気持ちは…、わかってる…って?