ホームまでわたしを引っ張った恭太は、両ひざに手をあててあえぐわたしから少し離れて、黒いスニーカーの爪先をトンと床に打った。
「ここまで情けないとはな。基礎体力、ゼロ」
「…ぅるっ、さいわ」
「とりあえず、セーフ」
　横目でホームにすべりこんでくる電車を確認。

「押す…な、ばかっ」
　中学のころのような口をきいてしまったことに気づいたのは、背中を押されて強引に電車に乗りこまされてしまったあと。
　茫然としているまに電車が動き出す。
「席、空いてる。座ろうぜ」
「…………」
　(いやだ)
　なにこれ。
「ほら。さっさと座れ」
「…………」
　考えていたのは、次の駅でドアが開いたら降りる！
　ただそれだけ。