「あらら、その掛居くんが注目の的ですな。――困るな、ちょっと。未成年にカメラを向けられたら!」
 山田が突然、早足で歩きだす。
 ついて行こうとしたら、岡本に腕をとられた。
「ちょっと稲垣。さっきからあんた、どういうこと? あんた、タカラヅカが好きなんじゃなかったの?」
「……ぁ……」
「…………」
 岡本ににらみつけられて、すくんでしまうけど。
 山田が掛居と恭太のじゃまをするまえに、山田当番をがんばらないと。
「行こ、岡本」
「……そうまでして掛居氏と…ってか、(こん)くんといたくなかったわけか」
「…………」
 するどい。
 掛居が山田につかまった。
 周囲にはもちろん美術館組もいるのに、その輪のさらに外に、じわじわとケータイをかまえたおばさんたちが寄って行っている。
「掛居氏、タカラヅカのひとにまちがわれてるわね。女子に囲まれてるから」
「――ぇ」
「とりあえず写真てやつじゃない、あれ」
 掛居と恭太。
 そのまわりにベンチ組。
 さらにそのまわりに寄っていくおばさんたちの手にはケータイ。
「あの子たち、ここぞとばかりに(こん)くんの写真撮っちゃって! わたし行くわよ、稲垣」
「…ゃ……、あの…」
 わたしは行かない。
 足を踏ん張ったら岡本が天を仰いだ。