うしろで、のっそり恭太が動く気配がした。
赤い絨毯が敷かれたほの暗い廊下は、人気もなく静まっていて。
恭太がスリッパの裏でとん…と壁を蹴ったのが、わかるほど。
カチッ カチッ
小さな金属音はライターだ。
恭太が焦れている…音。
(苦しい)
こんなのはいやだ。
息が…できない、よ。
「おい……」
呼びかけられて。
一度びくっとした身体は、もう止まらない。
カタカタ、カタカタ、奥歯が鳴り出した。
(なにか)
なにか探さないと。
恭太が掛居を待てるように。
なにか……。
「こんなことして――…」
(ああ…)
だめだ。
言ったらだめだ。
わかってるのに、それしか浮かばない。
「岡本たち、がんばったのに。みんなで…行けるように。がんばったのに」
「関係ねえよ」
冷たい声。
「どうして?」
関係なくない!
恭太のスリッパがジュータンの上を歩き出す、しぱっしぱっという音。
行ったらだめ。
恭太も考えてくれないと、だめ。
わたしにしか言えないなら、わたし、言うよ。
言ったらきらわれることだって、わたし言う。
みんなのために、わたし言う!
赤い絨毯が敷かれたほの暗い廊下は、人気もなく静まっていて。
恭太がスリッパの裏でとん…と壁を蹴ったのが、わかるほど。
カチッ カチッ
小さな金属音はライターだ。
恭太が焦れている…音。
(苦しい)
こんなのはいやだ。
息が…できない、よ。
「おい……」
呼びかけられて。
一度びくっとした身体は、もう止まらない。
カタカタ、カタカタ、奥歯が鳴り出した。
(なにか)
なにか探さないと。
恭太が掛居を待てるように。
なにか……。
「こんなことして――…」
(ああ…)
だめだ。
言ったらだめだ。
わかってるのに、それしか浮かばない。
「岡本たち、がんばったのに。みんなで…行けるように。がんばったのに」
「関係ねえよ」
冷たい声。
「どうして?」
関係なくない!
恭太のスリッパがジュータンの上を歩き出す、しぱっしぱっという音。
行ったらだめ。
恭太も考えてくれないと、だめ。
わたしにしか言えないなら、わたし、言うよ。
言ったらきらわれることだって、わたし言う。
みんなのために、わたし言う!


