猫の子みたいにわたしを後ろに放って、さっさと乗りこんだのは岡本。
「ぅわ、ごめ……」
 突然のことに。
 ぶつかった子にあやまりながら胸を押さえて。
 こふこふセキこんでいると、目の前にだれかが立った。
「ぇと、シューコも行くの? いま誘いにいくところだったんだけど」
 掛居だ。
 わたしも言葉が出なくて口をぱくぱくしてしまったけど、周りも静かになった。
「あんたたち! 行くわよ」
 エレベーターのなかから響いた岡本の声に、口を掌で押さえた娘たちが一斉にパタパタと移動する。
「…ちょ!」
 待って。
 わたしも行く!
「わっ」
 足が出ない。
 閉まり始めるエレベーターのなかで、全員がぶんぶんと手を振っている。
 わたしの腕をつかんで、わたしの耳の横で風を起こしているのは掛居の掌?
「掛居っ」
 なに、手なんか振ってるの!
 やめて、やめて。
「ぁぁあああああ」
 ドアが閉まる。
 電光掲示板の数字が下がっていく。
 バチバチ下ボタンを押してみたって、降りていってしまったものは、娘たちをロビー階に降ろさなければもどってこない。
「どういうつもりよっ」
「…やっぱ、怒ってるな」
「なにをよっ」
 掛居がわたしのうしろから腕を伸ばして、上ボタンを押した。
 なにするの!

 腹立たしいことに、上階へのエレベーターは、すぐにきた。