「…………」
「…………」
 岡本の目、真剣で。
 吸いよせられたみたいに目が離れない。
 岡本はわたしの視線を真正面からとらえたまま、ドライヤーのプラグをコンセントから引き抜いた。
「それじゃあさ」
「…………」
「なんで、あんたに恭太って呼ばれて、ふつうに返事するわけ、(こん)くんは」
「うそっ」
 わたしが恭太って呼んだ?
 い…つ?
 どこで?
「ほーら、やっぱり気がついてない」
 岡本が乱暴にドライヤーのコードを巻いて、立ち上がる。
「……だったら、わたしは明日、ぜったい彼から離れないわよ」
 突然なによ。
「好きに…すれ、ば?」
 そんなこと、わたしには関係ないよ。
「いいんだね?」
 いいに…決まって、る。
「あんたたち3人のアヤシイ関係なんか! この際、わたしは知りたくないの。あんたはおとなしく! 掛居氏とくっついててよね。いまさら、ごちゃごちゃすんのは、なしだよ」
 ごちゃごちゃ…って。
 もう、とっくにごちゃごちゃだよっ。
 わたしは呼ばない。
 恭太なんて…呼ばない!
 だって。
 だって、もう。
 呼んじゃいけないんだもん。