「あんたは、どうでもよかったみたいだけどね」
「…………」
 どうでもよかったんじゃ…ない。
 ほっとした。
 《4人》でなくてすむことに。
 (だけど……)
 わからないのは掛居。
 《4人》でなくていいなら、恭太を独占できるチャンスなのに。
 どうしちゃったんだろう。
 わたしになら、あやまらなくていいのに。
 それとも……。
 岡本と行けるように、恭太に頼まれたんだろ…か?
「…………」
 だめだめだめ。
 そんなこと考えちゃ、だめ。

「もういい!」
 え…?
「わたしらしくない。いましか聞けないから、いま聞くわ」
 岡本がドライヤーで髪を整えながら、わたしのお尻を爪先で突いた。
 ……なに?
「あんた。(こん)くんとなにがあった?」
「え?」
 わたしを見つめる岡本の目、真剣だ。
「な…に突然。なんにも…ないよ」
 突然の質問は答えを用意できなくて。
 先も読めないままじゃ、もう岡本のほうは見られない。
 畳を這いずってテレビのリモコンをつかんだ。
「稲垣あんた……、わたしに隠してること、あるわよね?」
 テレビに向けたリモコンの先を掌で覆って、岡本の目は追求をあきらめないままわたしに迫ってくる。
 やだ。
 どうしたの?
「なに言ってんだかな」
 さらにテレビにずり寄っていくと背中でカチッと音がして。
「うわっ」
 岡本がドライヤーの熱い風を、わたしの顔に向けてくる。
「やっ。なにすん……」
 カチッっとスイッチが切れる音がして。
 熱い風がとぎれたとたん、岡本の髪がするっと頬にかかったのがきれいで、視線があわないようにしていたことを忘れてしまった。