(見たくなかった?)
 そう。
 やっぱり見たくなかったんだ、わたし。
 恭太が岡本といるところなんて。
「…………」
 気づいてしまえば食欲減退。
 お箸を持つ手がテーブルに落ちた。
 (わたしったら……)
 いつからこんなに醜い子になったんだろう。
 岡本は黙って、掛居の持ってきたお皿に、牛肉をのせてやっている。
 掛居には怒っていても、女子が残しそうなお肉は男子に譲るあたり、本当に冷静で公平な女の子なんだな、と思う。
 わたしとは大ちがいだ。

「おーい。肉、肉。掛居、まだかぁ」
 チン チン チン チン
「早くしてーん!」
 となりのテーブルは、岡本の手元が見えたのか、みんなして元気にお茶碗を鳴らして、お肉コール。
「やかましい!」
 菜箸を振りあげて怒鳴る岡本の脇に、ちんまり正座していた掛居が、ゆらりと膝立ちした。
 見下ろされる角度になった岡本は敏感に察して、あからさまに掛居をにらんだけど、立ち位置は大事だ。
 見下ろしている掛居の顔に浮かんでいるほほえみのほうが、圧倒的な優位感に満ちて正しいように思えてくる。
 (岡本がんばれっ)