「…ここ、うまいよ、シューコ」
「うるさい! 飲食店には入っちゃいけないって言われてるの、忘れたの?」
「それ、意味わかんないし」
 わかんないって……。
 食事時に!
 一気に! 
 300人もの人間が押しかけたら、ほかの観光客に迷惑だからでしょうよ。
 そのくらい説明されんでもわかれ、ばかもの!
「…も、いい。さっさとどこかに移動して! 神護寺でも、西明寺でも。どこでもいいから、どっか行ってアリバイを作るのよっ」
「アリバイ? なんの?」
「……っ……」
 身体が震える。
 (…あ、れ?)
 なんだ?
 汗が冷えてきたから?
 (…ゃ)
 ちがう。これ低血糖か。
「い…いから行ってっ!」
 道路にしゃがみこんで、手だけで…しっ、しっ。
「シューコ!?」
 だめ…だって。
 わたしなんか、放っておいていいから。
「ウォーリーが、探して…る。早く! 早く…行ってっ」
「シューコ! おまえ真っ青だぞ? おいっ!」
 あらららら。
 頭がずるずる掛居の肩のほうに落ちていく。
「ご…めん、掛居」
 肩からずりおちたナップサックを、掛居の手に押しつけた。