わたしたちの好きなひと

「きゃっきゃ言ってたのは、若い女性たちなんですけど――って、それはどうでもいいんだった。とにかく! その子がアイドルみたいな子だった…と、こう言うわけですよ」
 アイドル?
 ちらっと見た岡本が、こっくりうなずいた。
 鈴木さんにいたっては両手で口元をおおった。
 (そうね)
 まさに名古屋事件の首謀者。
「そんなのは、あなた。だらだら髪を伸ばしている掛居くんしか考えられないじゃないですか! ――ああ、だから切れ切れって言ってたんです、私はっ! いくら校則がない学校だからって、自由と勝手をはきちがえちゃ……ごふ、ごふ」
「先生!」
 落ち着いて。
 だから、わたしにどうしろっていうんですよぉ。
「いらっしゃい、稲垣さん! 探すんです。よそのクラスの先生たちとバッタリなんてことになったら…私の管理能力が問われるじゃないですか!」
「…………」
 なぜか落ち着いてしまった。
 それは、同情できない考えかたです、センセ。
「まったく…。まったく…。成績優秀な、まことに将来が楽しみな、生徒だと、思ってましたの、に。アン、ビリィーバブル!」
 あい びりーぶ!
 またやったのよ、あいつら。