「雫に会ったら久しぶりに」
「声が聞きたくて。」
「色々話しもしたいしって思って。」
「颯太君!」
「駄目だよ……。」
雫は、泣きそうな声で言った。
きっと俺困らしてるんだろうなぁ。
「雫?」
「涙目だけど大丈夫?」
やばい……ギュッと抱きしめたい。
俺は雫に近づいたけれど、
雫は自分の手で俺の胸を押さえて
距離をとった。
「颯太君、私……圭介と付き合ってる。」
「うん……知ってる」
「圭介から聞いた。」
「だから、2人きりで会うのも」
「今日が最後にしたい。」
「私、やっと前へ進めるの。」
「颯太君、私の事友達ってさっき」
「言ってくれたように私も颯太君と友達」
「だと思ってる。」
「だから、会う時はみんなといる時」
「のが良いと思う。」
「今日は偶然だったから仕方ないけど。」
そう私は言いながら心がズキズキと傷む。
まだ颯太君への気持ちが完全に
なくなったわけでもないから余計に苦しい。
だけど私は圭介と一緒になるって決めたの。
私が辛い時、1番傍に居てくれて守ってくれた。
圭介が嫌な事はしたくない。
「そうだよな。」
「ごめん、雫の気持ちも考えないで」
「行動してしまって。」
「友達って言ってくれるだけでも」
「ありがたいのに欲が出てしまった。」
「圭介にも悪い事したと反省する。」
雫の言っている事は正しい。
だから、何も言い返せないし
まだ雫の事が好きだって言いたいけど
言える立場ではない。
だけど……雫、圭介ごめん……俺
雫が好きでたまらない。
俺だって会わないようにしてたけど
今日たまたま出会ってしまって、
より想いが強くなってしまった。
この気持ちはどうしたらいい……
この想いは残したい。
色んな感情が葛藤する。
「わかってくれたのなら」
「良かった。」
「それじゃ、私そろそろ帰るね。」
「圭介も心配するだろうし。」
そう言って、雫はトートバッグを右肩に
かけた時左薬指から綺麗な指輪が俺を
照らした。
2人の事を応援しないとって言葉では
簡単に言えるけど、こうして実際
進行を見てしまうと心が弱くなる。
俺この先大丈夫かな……。
「うん……」
「じゃまたね。」
雫は俺に笑顔を向けて手を振りながら
またねと言って、去って行った。
決して振り返る事はなかった。
私は家に着いてからも、
胸の高鳴りが止まなかった。
忘れなきゃ…忘れなきゃ。
私は今日の事を圭介に話しておきたくて
電話をかけた。
だけど、仕事が忙しいのか圭介は
電話に出なかった。


