「本当大丈夫だよ。」
「少しさっきまでは心臓がチクチク」
「してたけど、雫の可愛い仕草見れて」
「今治ったよ。」



「にっ!兄ちゃん?!」
「可愛いとかは好きな人に言うものだよ」
「だからそんな簡単に言ったらダメよ!」


びっくりした…兄ちゃんに可愛いなんて
言われた事なかったから。
兄ちゃんは冗談でも本気に聞こえる時も
あるから兄ちゃん取り扱いは難しいな(笑)


「可愛い妹だから言うんだぞ?」
「大切な大切な妹だからな(笑)」

可愛い妹ってのも本当だけど1番は、
異性として凄く愛おしいくて可愛いからだよ雫。
なんて隠さず言えたら良いのに。
まぁ、とにかく俺に出来ることをしていこ。


「わっ!わかったよ兄ちゃん///」
「だから、もう少し顔離れて。」
「近いし、電車乗ってる人達こっち」
「見てる…」



「あっ!」
「ごめん////!」

やってしまった!
ちょっと近く寄りすぎた!
でも照れてる雫がたまらなくてやばい。
赤く染まってる頬が太陽がほのかに照らす
光で美しい雫の照れ横顔がまた俺の
胸に強く焼き付けた。





「ねぇ、兄ちゃん?」


少しの沈黙の後、雫がどこか不安気な声で
俺の名前を呼んでいた。



「ん?」




「明日、学校で私の今日の出来事」
「吉川颯太君達がみんなに話して」
「噂流されてたらどうしょう…。」
「悪い人ではなさそうなのはわかる」
「のだけれど…。」



「なぜ雫はアイツらのこと悪い人では」
「なさそうと思った?」

おいおい雫…。
まさか雫の口からアイツらの事悪い人ではなさそうって言葉が出てくるなんて予想外だって…。
あのイジメ以来、警戒心強い雫からまさか
アイツらを悪く思ってないと言う思いが
あったなんて…。
なにか学校であったのか?





「あのね、私と吉川颯太君ね」
「クラス一緒で席も同じ列で前と後ろ」
「なの…。私が後ろで前に吉川颯太君。」
「でね、2週間前に吉川颯太君が」
「たまたま、私にぶつかってしまって」
「その衝撃で眼鏡が落ちちゃって。」
「ちゃんとぶつかった事、」
「眼鏡落としてしまった事謝ってくれて」
「怪我してない?大丈夫?」
「って気にかけてくれて…。」
「眼鏡もレンズ壊れたら修理するから言ってって言ってくれてさ。」
「そこまで気にかける人だから悪い人」
「ではないのかなと。」
「でも、苦手は苦手だよ?」
「中学の時の男の子に似てるから。」
「モテてるとこ、みんなに好かれるとこ」
「明るいとこ、笑顔が素敵なとこ。」



「雫…吉川颯太の事気になるのか?」




「兄ちゃん!何言ってるの?」
「そうじゃないってば!」
「私はただ悪い人ではないけど」
「万が一噂流されたら凄く不安で…。」
「噂流されないか気になっただけだよ!」



「その時は俺が絶対守ってやる!」
「雫は俺の大切な…妹だ。」
「雫を傷つける奴は許せないし」
「雫を軽い気持ちで見てる奴らも論外だ」
「俺は…雫が世界一大切な…妹だ。」
「だからもし辛い事あっても1人で」
「悩むな。解決もするな。」
「なんでも話せ。俺が聞いてやるから。」




その言葉を言うだけで精一杯だった。
雫が吉川颯太の事無意識に見てるって
気付かされてから俺は頭が真っ白に
なっていた。
雫はまだ気付いていない。
吉川颯太の事少しでも気にしてる事。
このまま気付かないままでいい。
雫は鈍いままがちょうど良いんだ。
中学、雫に告白してきた男子の事もきっと
あの頃も雫はその男子のこと前から気になっていたはず。
だけどあの時も気付かないままあんな事になった。
まぁ、アイツはその後逆ギレして雫を傷つけたクソ野郎には違いない。
だから今回の吉川颯太もわからない。
だから気付かないままで良いんだよ雫。