「ここのラーメン屋」
「最近見つけて、すごく美味しいから」
「連れて行きたかったんだ。」
慎吾が最近ハマっていると言う、
とんこつラーメン屋に俺と圭介は
連れて来られた。
店内に入るとラーメンと餃子の良い香り
が店内に漂う。
イタリアにもラーメン屋はあって食べたが、
やはり本場ではないので味はいまいちだった。
だからちゃんとしたラーメンを食べれるのは
本当に久しぶりだ。
「圭介、颯太これが1番オススメ。」
「じゃ、俺は慎吾がオススメしたラーメンと」
「チャーハンにする。」
「颯は何するか決めた?」
「俺も慎吾のオススメラーメンと餃子1人前」
「にしようかな。」
「圭介、後でチャーハンひと口味見したい。」
「了解」
「じゃ、颯も餃子1個ちょうだい。」
「うん、もちろん。」
「慎吾は何すんの?」
「俺はこの間もいつものラーメン食べたから」
「今日は油そばにする。」
俺達はスムーズに注文を済ませて、
ラーメンが来るのを待った。
3人で待っている間、圭介と慎吾がイタリアの
生活はどうだったかと聞いてきたので、
イタリアであった出来事を話していた。
すると、また圭介のスマホが鳴り出す。
「ごめん、電話。」
「仕事系?」
先程も電話で仕事の話ししていたから
そうかと俺は思ったから聞いてみた。
慎吾は特に気にもせず、スマホを上着の
ポケットから取り出し、誰かに
LINEを送っていた。
「……いや、雫から。」
「ごめんちょっと出るわ。」
雫からの電話……。
スマホ越しだけど、そこに雫が居るような
錯覚をしてしまう。
電話越しから微かに聞こえる雫の声に
俺は一瞬で心を持っていかれた。
一瞬で高校生の時の雫と幸せだった頃を
フラッシュバックする。
「どした?」
「あっ、ごめん今週末取りに行くわ。」
「急ぎの物じゃないから心配しなくて」
「いいからな。」
「今日家庭訪問だったんだろ?」
「お疲れ様ゆっくり休みなね。」
「うん……それじゃ。」
「木ナッシーなんだって?」
「俺この間泊まりに行った時、」
「仕事用のノート置き忘れてたみたいで」
「心配で電話したって。」
「でもそれ、急ぎのノートじゃないから」
「今度家行く時に取りに行く。」
「そっか。」
「順調そうだな!」
「良かった良かった!」
「圭介……雫は元気にしてるの?」
「ああ、元気元気!」
「今、仕事も充実してるみたいだし。」
「そっか、それなら良かった。」
「今度よろしく言っといて。」
「うん。」
「颯は会う気ないのか?」
「会えないよ。」
「俺、雫を傷つけてしまったし。」
「会う資格ないよ。」
「そっ。」
「颯がそう言うのなら無理には誘わない。」
「うん……ごめんありがとう。」
「うん。」
「俺ちょっとトイレ。」
そう言って圭介は
スマホをテーブルに置いて席を立った。
「颯太、大丈夫か?」
「あっ、うん何とか(笑)」
全然大丈夫じゃない。
辛い……だけどこれが現実。
俺が手放した結果だから受け入れるしかない。
「まだ、忘れられないんだろ?」
「まだ、木ナッシーの事好きなのバレバレ。」
「うん……。」
「もう、駄目だな俺。」
「もっと吹っ切れると思ったけど」
「なかなか厳しいみたいだ。」
俺がそう、慎吾に話すと同時に圭介の
スマホにLINE通知が鳴ると共にロック
画面が写し出されたのを嫌でも
俺の視界に入ってしまって見てしまう。
ロック画面は、雫の写真だった。
きっとここ最近のものだろう。
そこに写し出された雫は髪はセミロング
になっていた。
そして大人になった雫の顔がさらに
可憐に美しくなっていた。
こんなの見たらやばい……。
今すぐにでも会いたくてしょうがなくなって
しまう。
「綺麗だ……。」
俺はいつの間にかそう呟いていた。
「ん?」
「颯太どした?」
「ううんなんでもない。」
ちょっとするとロック画面が暗くなって
雫の写真が見られなくなった。
さっきのは忘れよう。
圭介と幸せなんだし……。
俺は無理やり違う事を考え、
気をまぎらわせた。


