冬が過ぎ、季節は春になって過ごしやすい
気温になる頃俺は日本に帰国した。
日本を離れて9年が経つ。
あっという間のような長ったような
不思議な気持ちだ。
だけど、俺は一時も雫の事を忘れてはいない。
一時も気持ちも揺らいでいない。
未だに雫の事が大好きでたまらない。
1年前に慎吾が雑誌の撮影でたまたま
イタリアに来た際に久しぶりに会った。
その時に色んな話しをしてくれて、
圭介と雫が付き合った事も知った。
俺は胸が張り裂けそうなほど苦しくて
たまらない。
俺から別れようって言っておいて
虫がよすぎるけど、もう一度雫に会いたくて
たまらないし取り返したい。
だけどそんな事出来ないのはわかってる。
だから雫には会わないようにしないといけない。

ようやくイタリアの支配人が1人前に育ち、
父の跡継ぎもできた。
これからは俺は自由で就職先も決まった。
都内の有名ホテルのレストランで
ウェイターをしている。
そんな事を思い出していると着信音が
鳴り始めた。




「もしもし。」



「颯太!」
「今日暇!?」



「今日ちょうど仕事休みで家だよ。」



「久しぶりに会わねえ?」
「圭介も今俺家にいるんだよ。」


そう、慎吾が明るい声で喋ってくる。
圭介……俺が居たら気まづくないか?
嫌な思いしないか?



「だけど……俺……」



「えっなに、颯は俺に遠慮してんの?」
「それとも俺には会いたくない?」



「圭介!」
「そうじゃない!」
「そりゃ会いたいよ久しぶりに」
「いっぱい話したい。」



「だったら来いよ。」
「別に遠慮する必要もなくねぇ?」


「ありがとう。」



「じゃ、慎吾に代わるわ。」