「もしもし」
「颯太君?」


「雫、急に電話してごめん」


「全然平気!」
「颯太君の声聞けて良かった。」


「あのさ、今から雫家の近くの公園に」
「今いるから 来てくれる?」

「もちろん行くよ!」
「ちょっと待っててね」


颯太君に早く会いたくて、私は慌てて家を飛び出した。

颯太君…なんだか元気が無いような声だったなぁ。
凄く心配だし、すごく胸騒ぎがしてなんだか
胸がザワザワと脈打つ感じ。
私はそんな事を思いながら、
颯太君が居る公園へ急いで向かった。



「颯太君!」
「お待たせ!」

私は颯太君を見つけて大声で叫んだ。
俯いたままの颯太君が私の方に顔を向けて、
笑顔で手を振ってくれたけれどそれも、
どこかぎこちない感じだ。



「雫!」
「ごめんな、こんな時間に呼び出して。」


「全然平気だよ。」
「颯太君こそ忙しいのにごめんね。」
「会いに来てくれて。」
「すごく嬉しい。」

颯太君の反応はとても悲しそうな表情をした。
なんだかヤダ…これ…嫌な予感しかない。

泣きそうになる。

だけど堪えないと…。


「雫…俺と別れて欲しい。」


「……やっぱり別れ話しなんだね。」


「知ってたの?」


「知ってるも何も、颯太君電話の時から
様子もおかしかったし元気もなかったから。」
「さっきだって俯いたままずっと考え事してたから。」
「多分良い話しではないよね、きっと別れたい
って言われるのかなって。」
「予感的中しちゃった。」



「ごめん。」



「でもどうして?」
「私何かしたのかな?」
「悪いところあったら教えて欲しい。」


「雫は何もしてないし、悪いところなんて
1つもないよ。」


「じゃぁどうして?」


私は涙が流れないように必死に堪えながら
精一杯の平常心を装い質問をした。


「俺、イタリアに行くんだ。」
「この前、お父さんとイタリアの支店に」
「行った時にそこの支店長の娘さんと
婚約する事に なった。」


「な…なにそれ。」
「その人の事はちゃんと好きなの?」
「お父さんのお願いで婚約するの?」

もうそう、口にしたら涙が溢れてきてしまった。
このまま逃げたくなった。


「好きだよ。」
「俺から婚約は望んだんだ。」
「わがままでごめん。」


「そっか…それじゃ仕方ないよ。」
「その人の事好きになっちゃったんだもん。」
「私が、嫌だ別れたくないって言っても」
「無理なんでしょ?」


「うん。」
「ごめんな雫。」


「謝らないでよ。」
「すごく惨めになる。」
「良いよ。」
「颯太君がその人と幸せになれるのなら」
「別れるよ。」



「雫、ありがとう。」
「今まですごく幸せだったよ。」


「私も。」
「颯太君ありがとうね。」
「ちゃんと幸せになってね。」


「うん。」



「じゃ、私帰るね。」
「またね。」


私は精一杯の笑顔と手を振り、公園を出た。
颯太君の方へ振り向きたかったけれど
振り向いたら諦められなくなる。
だから私はグッと堪えてその場を後にした。