「颯太、ちょっとこっちに来なさい。」
そう父さんは帰ってくるなり早々俺を
呼び出した。
俺は言われるがまま、父さんの居るリビング
のソファーに腰を下ろす。
「なに?」
「ここ最近忙しくお前に頼りぱなしで」
「すまない。」
「引き続きも頼む……期待している。」
「父さんがイタリア行ったら」
「日本の支店は今引き継ぎの人がやって」
「くれて落ち着くからそうなったら」
「手伝わなくて済むんだろ?」
「ああ……日本は落ち着くんだが。」
「颯太が落ち着くのはまだ先に」
「なりそうだ。」
「は?」
「それどう言う意味だよ……。」
「今からものすごく大事な事を話す。」
「頼むから父さんを助けてくれ……。」
「なんだよ…そんな深刻な顔して。」
俺の父さんが珍しく苦しい表情をしながら
俺に頭を下げた。
その状況を見て俺は余程状況が深刻なんだと
悟る。
「颯太……お前も父さんと一緒に来年」
「1月からイタリアに来てくれ。」
「えっ?状況が読めねえよ。」
「頼む…父さんな、肺に癌が見つかった。」
「肺癌だ。ステージは2で向こうで治療」
「して行く為、颯太にはイタリアの」
「工場が落ち着くまでお前の力が」
「必要不可欠なんだ。」
「マジかよ……。」
「俺……どうすれば良いんだ……。」
「そんな急な展開想像以上だぞ。」
「それとな、徳井華さんと本当は」
「颯太を結婚させて跡継ぎにしたかった」
「んだが断られてな。」
「徳井企業は俺にとっては大きな」
「クライアントだったけど華さんは」
「別の人と婚約することになった。」
「勝手に人の人生決めんなよ。」
「俺はもし断れなかったとしても」
「俺から断ってるからな。」
「雫しか俺はいらない。」
「雫しかこの先もずっと考えれない。」
「雫さんとは一旦別れてくれ。」
「颯太は会社の事に集中してほしい。」
「このイタリアに新しく支店ができるのは」
「会社にとって大きな進歩なんだ。」
「安定に乗ったら颯太の自由にしなさい。」
「父さんはもうなにも言わない。」
「雫さんと寄り戻しても反対はしない。」
父さんはそう言いながら涙を流していた。
相当の危機なんだと伝わる……。
父さんが肺癌になってでもこのイタリアの
進出に命をかけてでも成功させたい気持ち
もわかるが……。
雫と別れるなど俺にはできるのだろうか……。
「颯太、今現在雫さんのお父さんが」
「勤めている会社の景気が悪いらしく」
「今会社は赤字みたいだ。」
「このまま行ったら倒産だろうな。」
「なんでそんなとこまで知ってるんだよ。」
「同じ飲食の業界だから自然にも」
「情報は入ってくる。」
「そこでだ、今その会社がうちの会社と」
「契約をしたがっている。」
「向こうも必死でな。」
「正直この会社と契約を結んでこちらには」
「プラスになるとはいえない」
「だが一旦雫さんと別れてこっちに集中」
「してくれるのであれば契約を結ぶ」
「つもりだ。」
「そうすれば雫さんの家庭は安定するのは」
「保証しよう。」
「雫さんにとっても良い話しだが。」
マジかよ…もうそんなの一旦別れざる
終えないじゃんかよ。


