そして、私の先程の胸騒ぎは的中する事に
なってしまう。
神様…なんでそんな意地悪をするのだろう
と私は涙が出そうになるのをグッと堪えた。
「颯太君!」
「来ちゃった!」
そう言って俺の手を握って来たのは
徳井華だった。
俺はすかさず握られた手を放す。
「なんで!?」
「ここが分かったんだよ?」
「颯太君のお父様が教えてくれたのよ!」
「あの親父…。」
「ところでこちらのみなさんは?」
「俺の横にいるのが雫、俺の彼女。」
「そしてその横が美桜ちゃんに圭介」
「と慎吾。」
「俺の大切な仲間だよ。」
「初めして私、桃崎女子校に通ってる」
「徳井華と申します。」
「私と颯太君の関係は、これからお互い」
「ビジネスとして2人で協力し合って」
「プロジェクトを成功させる為」
「これから一緒にパートナーとして」
「会社を支え合う仲間になりました。」
私の頭の中は真っ白に染まった。
前に颯太君から聞いていた…。
そんな事を言われていた事を…だけど
実際相手側からも言われると何も
考えれなくなる。
そもそも仕事の仲間なのに、
何故学校にまで会いに来たのだろ。
私はモヤモヤしながら彼女と颯太君の
会話のやり取りを聞いていた。
「あっ!あなたが雫さんね!」
「颯太君からよく話し聞くわ。」
「すごく大切にされていて羨ましいわ。」
その言葉がとても棘がある言い方だった。
私はわかってしまった…
わかりたくなかったのに彼女はワザと
遠回しに言ってきたのだと思った。
颯太君からは好かれている
好きなままでいたいと言われた事も
聞いているけどそんなレベルではない。
きっと颯太君を狙う気満々だと思う。
「徳井さん、俺ら今から用事あるんだ。」
「あら、みんなで遊びに行くの?」
「寂しいなあ…せっかく颯太君に」
「会いに来たのに。」
「また今度伺うわそれじゃ…。」
「ああ…。」
そう言って徳井華さんと颯太君が会話を
した途端突然徳井華さんは咳き込み
うずくまり出す。
「大丈夫ですか?」
私は徳井華さんの背中をさする。
「大丈夫よ心配しないで。」
「咳止まんねぇじゃんか…」
「まだ喘息続いてたんだな。」
「薬は?」
「お…いて…ゲホゲホ」
「置いてきちゃった。」
「何やってんだよ。」
そう言って颯太君は徳井華さんをおんぶ
し、私達の方を向く。
「雫、みんなごめん。」
「俺、徳井さん病院に連れてから行く」
「から先行ってて。」
「また連絡する。」
「わかった。」
私は一言そう言うだけでいっぱいいっぱい
になっていた。
みんなも了解していたし、なんせ体調が
悪くなってしまったのなら仕方がない。
喘息は辛いもん…颯太君しか今頼れる
人いないもん。
そう自分に言い聞かせた。
そして、おんぶして去って行く颯太君の
後姿を私は姿が見えなくなるまで
見ていた。


