「それで、何かわかったか?」
声を潜めて尋ねるザックがすするのは、アーシェリアスの作ったトマトスープだ。
『あいつらに食わせてやれ』
売りものの状態は良く保つべき。
そんな頭領の思惑もあり、ザックとノアもアーシェリアスの作ったスープを味わっている。
仕事を終えたため牢に戻されたアーシェリアスは、ザックとノアを見て小さく頷いた。
「ここにいる盗賊は三十人くらいなのと、肝心の本はここにはないって。もう売られてしまったらしいの」
「えーっ、どこの誰にっていうのはわかった?」
ノアもまた声を小さくし、途中で「あー、おいしー」と暇そうにしている見張りの耳を誤魔化しつつ会話する。
「名前は知らないって。だけど、特徴を教えてくれたわ」
アーシェリアスはちらりと見張りに視線をやり、こちらに気が向いてないのを確認してから再び口を開く。
「王立騎士を従えた、ツリ目で癖の強い巻き髪。歳は四十代くらいのモノクルをかけた男性だったって」
牢へ戻る前、頭領から聞いた情報のままに伝える。
するとザックがスプーンを口に運ぶ手を止めた。
「……ひとり、思い当たる人物がいる」
アーシェリアスとノアが高揚して目を見開いた。
それは誰なのかと、ふたりの双眸がザックに問いかける。
「ファーレンの宰相、マットス・クリンガーだ」
宰相といえば、王に命ぜられて国政を補佐する者。
声を潜めて尋ねるザックがすするのは、アーシェリアスの作ったトマトスープだ。
『あいつらに食わせてやれ』
売りものの状態は良く保つべき。
そんな頭領の思惑もあり、ザックとノアもアーシェリアスの作ったスープを味わっている。
仕事を終えたため牢に戻されたアーシェリアスは、ザックとノアを見て小さく頷いた。
「ここにいる盗賊は三十人くらいなのと、肝心の本はここにはないって。もう売られてしまったらしいの」
「えーっ、どこの誰にっていうのはわかった?」
ノアもまた声を小さくし、途中で「あー、おいしー」と暇そうにしている見張りの耳を誤魔化しつつ会話する。
「名前は知らないって。だけど、特徴を教えてくれたわ」
アーシェリアスはちらりと見張りに視線をやり、こちらに気が向いてないのを確認してから再び口を開く。
「王立騎士を従えた、ツリ目で癖の強い巻き髪。歳は四十代くらいのモノクルをかけた男性だったって」
牢へ戻る前、頭領から聞いた情報のままに伝える。
するとザックがスプーンを口に運ぶ手を止めた。
「……ひとり、思い当たる人物がいる」
アーシェリアスとノアが高揚して目を見開いた。
それは誰なのかと、ふたりの双眸がザックに問いかける。
「ファーレンの宰相、マットス・クリンガーだ」
宰相といえば、王に命ぜられて国政を補佐する者。