破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします ②【11/25コミカライズ完結記念番外編追加】

「えっ、品切れですか?」

 目を見張ったアーシェリアスに、食堂を切り盛りする宿屋の主人の奥さんが「悪いね」と眉を下げる。

「今日はいつもの仕入れ先が休みでねぇ。今あるのは、豚肉と、あとは卵とパンくらいなんだよ」

「そうですか……」

 時間も夕飯時を過ぎているので仕方ない。

 しかし、楽しみにしていたノアは唇を尖らせた。

「ええ~、ボクもうお腹ペコペコだよ」

「どうする? 酒場に行くか?」

 パンだけもらうのもありだが、酒場ならもう少しメニューも豊富で腹を満たせるものがあるだろう。

 アーシェリアスもそう考え、ザックの提案に首を縦に振ろうとした時だ。

「ここにいたか、みんな」

 外から戻って来たエヴァンが、大きな袋をふたつ抱えて食堂に入ってきた。

「うわっ、まさかそれ全部マンゴーなの?」

 若干引き気味に尋ねるノアに、エヴァンは白い歯を見せて笑う。

「それが、青果店の店主が気のいい人でな。マンゴーをあるだけ買ったらおまけでくれたんだ」

 そう言って袋から取り出したのは、ジャガイモだ。

「それから、キャベツとトマト、玉ねぎももらったぞ」

 アーシェリアスが袋の中を覗くと、キャベツが二玉、トマトが四つ、玉ねぎがふたつ、ジャガイモが八個入っている。

「ジャガイモは日持ちもするし、貰っておいて損はないだろう?」

「そうだな。出発前には食料を少し買い足すつもりだったし、助かったな」

 エヴァンが得意げな顔で言い、隣に立つザックが頷いたところでアーシェリアスは思い付く。