「そうか。ならばアイザッ……ザック様もご活躍されたんだ。僕もぜひ祝って差し上げたい」

「そうですね! では、宿泊先のオーナーに頼んで良い場所を用意させますね」

 せめてアルバートが拒否してくれたらよかったが、アルバートにとってザックは敬うべき相手。

 もてなすべきという気持ちもあるだろうし、騎士として株を上げる為には名案だ。

 しかし、アーシェリアスにとっては地獄の時間になる。

 なんとしても阻止せねばと首を大きく横に振った。

「き、気を使わないでミア! 私たちは」

「少しだけ待っていてね」

 善意しかありませんという天使の微笑みを浮かべ、ミアはワンピースの裾を翻して行ってしまう。

「ふふん、ミアは気が利くな」

 僕の為に提案してくれたと言わんばかりのドヤ顔で、アルバートは満足そうに目を細めた。

(どうしよう……せっかくの厚意を無下にするのは申し訳ないけれど、ここはザックに相談して断ってもらう方がいいかもしれない)

 自分だけでどうにかするのは難しいだろうと判断し、ザックを探そうと辺りを見回す。

 その素振りに、アルバートは「アーシェ」と真面目な顔で呼んだ。

「なんですか?」

 見上げるアーシェリアスの瞳を、アルバートは真っ直ぐに見つめる。

「ずっと疑問に思っていたんだが、僕を避けるのはなぜだ」

 ドクン、と心臓が強く脈打った。

 バレていたのだ。