アーシェリアスがその顔の笑顔をひきつらせたのは、神様と別れてから十分も経たない時のこと。

「アーシェ! フフッ、来ちゃった!」

 ハートマークを撒き散らすが如く、とびきりの可愛らしい笑みで声をかけてきたのは、破滅フラグ製造機こと、ミアだ。

「ミ、ミア。来ていたのね」

 しかしも俺様アルバートも一緒。

(セットはやめてぇぇぇ! 天丼とカツ丼がセットで出てきたら胃が破滅! ミアとアルバートのセットは私が破滅するのよ!)

 破滅フラグの倍率が激上がりで、アーシェリアスは今すぐここから逃げ出した衝動を必死に抑え込む。

「私、アーシェが優勝すると思っていたのに、残念~」

 どうやら観客の中にふたりがいたらしい。

(コンテスト中に気付かなくて良かった……!)

 気付いていたら動揺し、味付けを間違えていたかもしれない。

 アーシェリアスが心底安堵し無意識に胸元に手を添える中、アルバートが相変わらずの不遜な態度で「おいアーシェ」と呼んだ。

「優勝したあの女性、まさかとは思うが……」

 アルバートの視線が、女装したザックを捉えている。