「そうだったんですね……。この世界が気になるってことは、失った記憶に関わってるってことなんですかね……」

「どうだろー。でも実は、君にこの世界の名前を聞かされた時、ほんの一瞬だけひっかかるものがあったんだ」

 言われてみれば確かに……いや、そんな素振りはあったかなと記憶を探っていたアーシェリアスはふと、コスタの話を思い出した。

 コスタの祖母、リンカ・イディアルの存在を。 

「あの、もしかして、神様ってこの世界にもうひとり転生させませんでした?」

「うーん……覚えてないなぁ」

「そうですか」

 では、別の神様が転生させたのだろうか。

 自分のように不運にも寿命を全うできなかった者を。

「さて、我はそろそろ行こうかな。気になるからまた来ると思うけど、会えたらよろしく。ではでは、エンジョイ!」

「エ、エンジョイ!」

 ウィンクして手を振り去っていく神様。

 大切な記憶を犠牲にして、一体何に力を使ったのか。

(いつか取り戻せるといいですね)

 人波の中に紛れて神様の姿が見えなくなると、アーシェリアスは踵を返し、会場へと戻った。