コンテストが開かれる市場は、常時より一層賑わっている。

 優勝を目指す挑戦者は八人。

 多くの観客が見守る中、各々調理する女性たち。

 そのうちのひとりは──エヴァンだ。

 そう、彼は参加が許されたのだ。

 当然、受付時は辺りがざわついた。

『えっ、じょ、女性?』とひそひそ話す声も聞こえていた。

 しかし、『おお、亡きうちの妻に似ている!』と、受付のバイトに精を出す、図書館の勘違いおじいさんにより無事突破できたのだ。

「残り時間、五分です!」

 もみあげの長い司会者の男性が、大きな声でタイムリミットを知らせる。

 アーシェリアスは、仕上げのタレを小鍋に入れて調合していた。

 シーゾーが出してくれた醤油、みりん。

 エスディオで仕入れた酢と酒。

 こちらを合わせてから、一昨日市場でゲットした、大陸外から入荷したばかりだという大根をすりおろす。

 おろした大根の汁気は合わせておいたタレの中に絞り流し、一度火にかけた。

「火にかけながらハンバーグを焼いた肉汁も足し入れて……出来上がりね!」

 そうして、白い皿に盛り付けて仕上がったのは、野菜を色鮮やかに添えた『和風おろしハンバーグ』だ。