アーシェリアスはチラリと隣のザックを見た。

 本当に美しい……が、その顔は死んでいる。

「ご、ごめんねザック。コンテストの為にこんなことさせて」

「……今日のコンテストが終わったら、今の俺のことは忘れてくれ」

 美しい姿から男の声が聞こえてくる違和感を少し楽しく感じながら、アーシェリアスは頷いた。

「頑張って抹消するね……。でも、本当綺麗だし自信持って!」

 少しでもテンションを上げられたらと励ましたが、ザックは不機嫌な顔でアーシェリアスを見るだけ。

 そんなやり取りをしていると、ノアが「もう無理!」と叫んだ。

 見守っていたシーゾーが驚いて「モフー?」と鳴く。

「ダメ! エヴァンはこれが限界!」

 今の今までエヴァンの女装を手伝っていたノアが、ついに根を上げてしまった。

「ガタイが良すぎて女らしくならない!」

 ザックを見事女性に変身させたノアの腕を持ってしても、エヴァンのたくましさを隠すことはできなかったらしい。

 アーシェリアスとザックが、深緑のワンピースドレスに身を包んだエヴァンを観察する。

「どう見ても女装した男にしか見えないな。美しくない」

「残念だけど、エヴァンさんは失格覚悟で行くしかないわね……」

「さっき思いやりの話をしたのはどこの誰だ。アイザック様も正直に言い過ぎです」

 エヴァンが突っ込んで、メイク道具を片付けたノアが溜め息を吐いた。

「あとは女らしい仕草とかでカバーするしかないかなー」

「仕草! 確かにそれがあると雰囲気出てくるかも!」

 名案だと、アーシェリアスが瞳を輝かせ手のひらを合わせる。