「いえ、本が盗まれたって聞いた時ショックでした。でも、確実に前進はしてるので」

 コスタから得た情報は、旅を始めてから一番『幻の料理』に近づけていると思えるものだ。

 何もわからないままマレーアを出た頃に比べたら雲泥の差。

「うむ! さすがマンゴーレディだ」

 エヴァンがカラカラと笑う横で、ザックがライ麦パンを指でちぎる。

「で、どうするアーシェ。盗まれた本を探すのか?」

「追えるところまでやってみたいと思ってるわ。本は質に出されたとかないかしら」

 アーシェリアスが言うと、ザックはパンを頬張りながら「金の為に盗んだなら可能性はあるな」と答えた。

「アイザック様、まずは当時の状況を確認しに、ここの自警団に聞いてみるのがいいのでは」

 エスディオの治安を守る自警団であれば、盗んだ者についても判明するかもしれない。

「そうだな。明日、詰め所を訪ねてみよう」

 ザックがアーシェリアスを見る。

 異存は全くないアーシェリアスは、有益な情報を得られることを願いながらしっかりと頷いて見せた。