「リンカ・イディアルさんの料理本のことかと存じます。こちらに、記されております」

 館長がリスト帳を広げ、アーシェリアスとザックに見せた。

 そこには確かに『領主の希望により寄贈』と書かれている。

 どうやら一般には公開されない特別室にて管理されているようだ。

「あのっ、拝見させていただくことは可能でしょうか」

 アーシェリアスが願うと、館長は「申し訳ありません」と眉を下げた。

「実は数年前、ここにある貴重な本がいくつか盗まれた事件がありまして……。その本も被害に遭い、未だ戻ってきておらぬのです」

「そんな……」

 貴重な蔵書が並ぶ棚の前で、アーシェリアスは落胆し盛大に肩を落した。